今週の『ブギウギ』（NHK総合）第10週「大空の弟」は、深い感情を揺さぶるエピソードでした。主人公スズ子（趣里）と梅吉（柳葉敏郎）は、六郎（黒崎煌代）の戦死という悲劇に直面します。この朝ドラは、昭和初期の戦争時代を背景にしており、その重厚な戦争描写は、制作統括の福岡利武氏の緻密な取り組みの結果です。
福岡氏は、自らの祖父の経験を基に、戦争のリアリティとその時代の人々の生きざまを描き出しています。「生きていく」というシンプルだが強烈なテーマを通じて、スズ子たちの強靭な生き方を描いています。第10週では、特に六郎の戦死をどう受け止め、描くかに重点を置いていました。また、梅丸楽劇団の解散とスズ子の歌う場所の失われる様子は、戦時の苦悩を際立たせています。
六郎が愛していた「亀」を題材にしたシーンは、視聴者に強い印象を与えました。六郎が残した亀と、それにまつわる手紙やスズ子の歌う「大空の弟」は、六郎の不在を痛烈に感じさせます。福岡氏は、六郎のキャラクターを形成する上で、「亀」を重要な要素として取り入れたと語っています。黒崎さんの熱演により、六郎の純粋さと彼の死の重みが、劇的に表現されました。
次週の第11週「ワテより十も下や」では、新たな展開が予想されます。梅吉の新天地への旅立ち、スズ子の全国巡業への決意など、登場人物たちがどのように「生きていく」かが見どころです。
このドラマは、戦争の苦しさと人々の強さを描いた作品で、多くの感情を呼び起こします。黒崎さんの演技、亀を巡る物語、そして戦時下の生活のリアリティは、視聴者に深い印象を残します。『ブギウギ』は、ただのドラマではなく、戦時中の生と死、愛と喪失を描いた芸術作品です。私の感想としては、このドラマが描く深い人間性と歴史の教訓は、今後も長く心に残るでしょう。
